「今が一番やりたいことをやれている」。エンジン一筋で切りひらいた40代のキャリアとは
※画像はイメージです
大手自動車メーカーで、バイクレース用エンジンの開発に従事する田中さん。自動車分野でのさまざまな仕事を経て40歳を迎える年にビーネックステクノロジーズに入社し、「今が一番やりたかった仕事をやれています」と語る彼に、夢を叶えるまでの道のりやレースエンジン開発の仕事、今後のキャリアの展望について話を聞きました。
大手自動車メーカー勤務 入社6年目(※) 田中 淳也 Junya Tanaka 2018年に入社し、大手自動車メーカーで就業。研究開発部門でバイクのエンジン開発に従事し、テスト工程全般を担当。 ※2023年12月時点
― エンジン開発は念願だったそうですが、エンジンに興味をもったきっかけを教えてください。
田中:まず、クルマに興味をもったのは高校生の頃ですね。たまたま本でラリー競技車の写真を見て「こんなかっこいいクルマがあるんだ!」と心動かされたのがきっかけです。以来、ハイパワーのスポーツカーやレーシングカーに憧れ、パワーの源であるエンジンに強い興味をもつようになりました。
以来、夢はエンジン性能を向上させる「エンジンチューニングの仕事に就く」こと。でも間口は狭く、これ一本でやっていくには厳しい世界だから踏みきれなくて。それでもとにかくクルマに関わりたい一心で、高校卒業後は自動車メーカーでエンジンの組み立てや新型車の生産ライン立ち上げ、整備などに携わりました。その間もエンジンチューンに対する思いは変わらず、いつもエンジンの専門書やチューニング関係の本を読んで勉強していましたね。
ビーネックステクノロジーズに応募したのは40歳を迎える直前でした。求人広告で自動車の開発分野の募集を目にし、組み立てや整備より、もっと踏みこんだ仕事ができるかもしれない、と強く惹かれたんです。入社後、自動車メーカーのエンジン開発の仕事を紹介された時は「きた!」と思いましたね。それこそまさに、私がずっとやりたかったことですから。
配属されたのは、バイクエンジンの研究開発部門。スクーターのエンジン開発を経て、現在のレース用エンジンの開発部門に異動となりました。長年いろいろな仕事をしてきて、45歳の今が一番やりたかったことができている。いまだに信じられない気持ちです。
|世界トップクラスのレースを舞台に、エンジン開発に挑む
― レース用エンジンの開発について、詳しく教えてください。
田中:私たちの仕事は、市販車のエンジンをベースに、レギュレーションの範囲内でエンジン性能を最大化すべくチューニングを施すことです。テストを繰り返しながらセッティングを決めていく開発工程において、エンジンに求められる性能を達成できているか、レースという過酷な状況に耐えうるかなど、性能や耐久性を検証・保証するのが私の役割です。
レースエンジンの開発で一番に求められるのはパワーですが、難しいのは、ただパワーがあればいいわけではないということ。レース車は市販車と違って乗る人が決まっているので、ライダーが乗りやすいセッティングにする必要があるんです。レースエンジンは高い負荷がかかるのでトラブルも多く、対応に頭を抱えることもしょっちゅう。というのも、エンジンは中が見えないからどこで何が起きているのかわからないし、エンジン以外のさまざまな要素も複合的に影響してくるので、原因究明が容易ではないんです。トラブル発生時は、いろいろな部署の人たちが協力して解決に臨んでいます。
― 就業先のエンジン開発チームは、どのような雰囲気でしょうか?
田中:私以外は皆さん正社員ですが、エンジン開発にかける強い思いがあれば正社員/派遣の間に何ら隔たりはなく、「レース優勝」という会社の目標に向かって一丸となって取り組んでいます。
エンジンのテストは私を含めて3人のメンバーで行い、実際のテストは私がメインで担当しています。私が出した結果が採用されることになるので、何より心掛けているのは正確さですね。ミスのないよう慎重かつ丁寧にテストを実践し、精度を高めるために、指示された以外にも必要なテストはすべて行うようにしています。成果を出せば「さすがだね!」としっかり認めていただける環境なので、モチベーションも高まります。
2023年には、自分が開発に携わったエンジンを搭載した車両が、大規模なオートバイレースで2連覇を果たしたんです。普段は家族と仕事の話なんてしないのに、この時ばかりはLINEで自慢しました(笑)。世界トップクラスのレースでエンジニアとして勝負できることを誇りに思いますし、日常では体験し得ないエンジンの領域に踏みこみ、性能をとことん追求できる今の仕事は本当に楽しく、やりがいを感じます。
|エンジン開発者として、新たなキャリアを築いていく
― 23年1月にはWebセミナーの講師も務め、「エンジンの仕組み」についての解説が好評でした。どんな思いで講師に立候補したのでしょうか?
田中:前職で技術トレーナーとして新入社員を指導していた経験があり、機会があればまたやってみたいと思っていたのが1つ。それと、ビーネックステクノロジーズは自動車関係の就業先も多いですが、今の若い方はクルマへの興味関心が薄いようなので、皆さんが少しでも興味をもつきっかけになればとの思いからです。
講師としてこだわったのは、わかりやすさですね。知識ゼロの人もつまずくことがないように、パワーポイントにアニメーションを多用する、難しい用語を使わないなど工夫し、資料に少しでもわかりにくいところがあれば何度も手直しをしました。手間も時間もかかりましたが、事後アンケートでは「非常にわかりやすい」「またやってほしい」などの声を多くいただき、私自身もこのために勉強し直し、知識のアップデートや整理ができたので、やったかいがありましたね。
― 今後のキャリアの展望を聞かせてください。
田中:これまで以上に、エンジンを突きつめていきたいです。実を言うと、これまでの知識や経験があれば、エンジン開発も難なくできるだろうと考えていたんですよ。でもいざやってみたら、「自分はまだまだなんだ」って思い知らされました。エンジン開発は、私より10年も20年も経験があるベテランエンジニアの方々でも、わからないことがたくさんある世界なんです。それだけエンジンは奥が深く、どこまで行っても知り尽くすことはないんだろうなと思ったら、ますますエンジンが面白くなりました。
これからも探求し続けて、自分が積み上げた知識や経験、ノウハウを、いつか形にして残したい。それが今の夢です。
取材日:2023年11月21日
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