設備保全のあるべき姿とは?3つのポイントや実現する上で必要なこと
自動車やロボット、半導体、航空機などの製造業において、生産ラインの効率的な維持管理を実現するためには、設備保全が不可欠です。しかし、近年のロボット導入や自動化、リードタイムの短縮、エンジニアのような専門スキルをもつ人材の不足といった課題に直面している企業も多いのが現状です。
- 「設備保全は実際どんな仕事?」
- 「設備保全を行う理由とは?」
- 「近年の設備保全のデジタル化に対する取り組みは?」
本記事では、設備保全の仕事内容、保守メンテナンスとの違い、デジタル化に対する取り組みに関して実務に役立つ情報を詳しく解説します。ものづくりや機械いじりが好きな方、製造業務から技術職への転職をお考えの方はぜひ参考にしてみてください。
目次
|製造業に不可欠な「設備保全」とは?
ここでは、設備保全の意味と重要性について解説します。併せて、設備保全の仕事を表にして比較しメリット・デメリットについても紹介します。
設備保全とは
設備保全とは、生産設備を最適に維持管理し、故障や劣化を防ぐための一連の活動で、安定した生産ラインを確保することが目的です。デジタル技術の導入により、設備保全はさらに効率化され、リアルタイムでの状態監視が可能になっています。これにより、企業は競争力を維持し、市場の変化に柔軟に対応することができるのです。
たとえば自動車用車体組み立て設備の場合、生産を止めないために定期点検から修理の際の部品交換は日常必要な業務です。あらゆる設備や機械は使用して入れば必ず劣化します。振動でねじに緩みが生じ、荷重がかかり続ければ疲労し、摩擦があれば徐々に擦り減るのは当然です。点検もせず劣化が進行すると設備が止まり、生産が止まり、1つの部品生産が停止すれば、それを組み上げる設備も停止せざるを得ない状況に陥ってしまいます。
こうした事態を防ぐために、劣化している部品を点検し早めに対処する。また音にも注意し通常と異なる音がないかも常に確認する。工場のすべての設備や機械が安定した状態で安全に稼働するように維持管理を行う、これが設備保全の役割です。
|設備保全の仕事内容とメリット・デメリット

設備保全は「きつい」と言われることもありますが、工場の安定稼働を支えるために欠かせない重要な職種です。担当する設備や機械は多岐にわたり、ロボットアームや自動搬送設備、機械加工機、プレス機、コンプレッサー、電源供給設備などがあります。この仕事では、機械や電気の知識だけでなく、ソフトウェアに関する知識も求められるため、専門性が非常に高いです。設備保全は、あらゆる設備や機械のトラブルを未然に防ぎ、工場全体の生産性や安全性の向上に貢献しています。
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主な仕事内容は、以下のとおりです。
| 仕事内容 | 詳細 |
|---|---|
| 予防保全 | ・設備・機械が壊れる前に事前に行う設備保全 ・定期的に決められた保全業務を実施 ・製品品質の向上や設備の長寿命化、機会損失の低減などがメリット |
| 事後保全 | ・設備・機械の故障、生産能力低下、不良品発生時に行う保全業務 ・トラブル発生後に対処する設備保全方式 ・日常メンテナンス費用削減や短時間で部品交換可能な場合に効果的 |
| 予知(予兆)保全 | ・故障の予兆を見極めて保全する方法 ・劣化予兆診断とも言われる ・適切なタイミングでの設備保全ができるため、予兆の的中率が上がればコストも抑えられる |
また以下に、設備保全の分類である「事後保全」「予防保全」「予知保全」のメリットとデメリットを具体的に解説します。
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| 保全の種類 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 事後保全 | コストを抑えられる (例:Vベルトが完全に切れるまで使用し、交換時にのみコストが発生する) 部品の寿命を最大限に活用できる (例:古いモーターを最後まで使用する) | 生産停止のリスクが高い (例:製造ラインがVベルトの故障で停止し、全体の生産に影響を及ぼす) 劣化した状態での使用により生産力が低下する (例:摩耗した部品を使い続けることで製品の品質が低下する) |
| 予防保全 | 突発的なトラブルを回避できる (例:ベルトの亀裂を事前に発見し、交換することでラインが止まらない) 生産停止や急な呼び出しが発生しづらい (例:定期点検で問題を事前に解決する) 品質や生産性向上に貢献 (例:定期的にフィルタを交換することで不良品の発生を抑える) | まだ使える部品を交換するためコストがかかる (例:寿命前にモーターを交換することで余分な費用が発生する) 日常点検の標準化や教育が必要 (例:点検手順を徹底するためのトレーニングが必要) |
| 予知保全 | 劣化スピードに応じた最適なメンテナンスが可能 (例:振動センサーを用いてモーターの状態を監視し、劣化が進む前にメンテナンスを行う) 安定稼働の維持と保全活動の最適化ができる (例:状態に応じた部品交換で設備の稼働率を向上させる) | 導入コストが高い (例:リアルタイム監視システムを導入するための初期投資が必要) デジタル化によるリアルタイム監視・記録システムの構築が必要 (例:センサーやソフトウェアの導入と運用が必要) |
この表を参考にすることで、各保全方法の具体的なメリットとデメリットを理解し、実際の業務に役立てることができます。
|IoTを活用した設備保全の方法
IoTを活用した設備保全の方法は、リアルタイムで設備の状態を監視し、データを収集・分析することで、効率的なメンテナンスを実現します。
例えば、ある製造工場では、振動センサーを取り付けたモーターを使用しています。このセンサーは、モーターの振動パターンを常時監視し、異常が発生した際には即座にアラートを発信します。これにより、保全チームは故障が起こる前に対処でき、ダウンタイムを大幅に削減しています。さらに、収集したデータはAIによって分析され、劣化の兆候を予測することで、最適なタイミングでの部品交換が可能になります。このように、IoT技術を活用することで、設備の稼働率を向上させ、コスト削減にも寄与しています。
|設備保全の年収性
ビーネックステクノロジーズでの設備保全業務の年収例は、以下のとおりです。
| 年齢 | 年収例 | 内訳 |
| 26歳 | 386万円 | 月給24万円 +残業手当 +賞与年2回 |
| 38歳 | 547万円 | 月給35万円 +残業手当 +賞与年2回 |
| 49歳 | 763万円 | 月給50万円 +残業手当 +賞与年2回 |
※上記は、残業15時間分を含みます。年収例は一例であり経験やスキルにより異なります。
経験年数やスキルによっても年収は異なるので、詳しい給与は実際の求人を確認してみてください。
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|設備保全のあるべき姿を3つのポイントで解説
設備保全のあるべき姿を具体的な事例を交えて3つのポイントに分けて解説します。
1.適切な予防保全の実施
予防保全とは、設備の故障を未然に防ぐために、定期的な点検やメンテナンスを行うことです。これにより、設備の稼働率を最大化し、突発的な故障を防ぐことができます。
事例
製造業の工場では、コンベヤーのベルトが定期的に点検され、亀裂や摩耗がないか確認されます。例えば、月に一度、専門の技術者がベルトの状態を目視でチェックし、必要に応じて早めに交換します。このように、故障が発生する前にメンテナンスを行うことで、生産ラインの停止を防ぎ、安定した生産を維持しています。
2.データ活用とAIによる最適化
デジタルトランスフォーメーション(DX)を進め、IoTデバイスから得られるデータをAIで分析することで、設備の劣化状態をリアルタイムで把握し、最適な保全計画を立てることができます。
事例
ある製造工場では、振動センサーを設置してモーターの状態を常時監視しています。このセンサーは、モーターの振動パターンをリアルタイムでデータ収集し、AIを用いて異常を検知します。例えば、振動が通常の範囲を超えた場合、AIが早期警告を発し、保全チームが即座に点検を行います。この結果、故障が発生する前に適切なメンテナンスを実施し、ダウンタイムを最小限に抑えています。
3.知識の共有と継続的な改善
設備保全に関する知識やスキルが全従業員に均等に浸透していることが重要です。また、保全活動は継続的に改善されるべきです。
事例
ある企業では、設備保全に関する標準作業手順書(SOP)を作成し、全従業員に配布しています。従業員は定期的にトレーニングを受け、マニュアルに基づいた作業を行います。例えば、給油作業に関するトレーニングでは、適正な給油量を知ることが強調され、過剰な給油による漏れを防ぐための注意点が説明されます。また、定期的に保全活動の成果を評価し、フィードバックを基にプロセスを改善することで、常に最適な保全体制を維持しています。
設備保全のあるべき姿は、適切な予防保全の実施やデータ活用とAIによる最適化、知識の共有と継続的な改善という3つのポイントから成り立っています。これらを実現することで、設備保全エンジニアは企業の生産性向上とコスト削減に寄与し、持続可能な運用を支える重要な役割を果たします。
|設備保全のあるべき姿を実現するために必要な人材とは
設備保全のあるべき姿を実現するためには、専門知識と技術を持った人材が必要です。
1.設備保全エンジニア
設備保全エンジニアは、設備の運用状況を把握し、予防保全やメンテナンス計画を策定する専門家です。彼らは設備の故障履歴や稼働データを分析し、最適な保全戦略を立てます。例えば、定期的な点検を行い、異常を早期に発見することで、生産ラインの安定性を確保します。設備の専門知識を持つエンジニアは、トラブル発生時の迅速な対応も可能で、企業の生産性向上に直結します。
2.データアナリスト
デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展に伴い、データアナリストは設備保全において重要な役割を果たします。IoTデバイスから収集したデータを分析し、設備の劣化状態や運用効率を把握します。例えば、振動センサーや温度センサーのデータを解析し、AIを活用して異常を予測することで、故障を未然に防ぐことができます。データアナリストがいることで、保全活動の効率化と最適化が実現し、コスト削減にも寄与します。
3.教育担当者(トレーナー)
設備保全の知識やスキルを社員に浸透させるためには、教育担当者が不可欠です。彼らは定期的なトレーニングを実施し、標準作業手順書(SOP)に基づいた教育を行います。例えば、給油作業や点検作業に関する正しい手順を教えることで、作業ミスを減少させ、設備の故障リスクを低下させます。教育担当者がいることで、従業員全体の保全意識が向上し、知識の共有が促進され、継続的な改善が図れます。
設備保全のあるべき姿を実現するためには、設備保全エンジニア、データアナリスト、教育担当者の3つの人材が重要です。これらの人材が連携し、専門知識を活かすことで、効率的な保全活動が実現し、企業の生産性向上に貢献します。
実際にビーネックステクノロジーズには、自動車用安全部品メーカーの設備保全エンジニアとして10年以上携わっている方もいます。インタビュー内容を参考に、設備保全への転職を考えてみてください。
詳しいインタビュー内容は以下の記事からご覧ください。
目指すは、設備保全のスペシャリスト。
|設備保全におすすめの3つの資格
設備保全におすすめの資格は、以下の3つです。
- 機械保全技能士
- 電気工事士
- 電気主任技術者
設備保全業務には、必須の資格はありません。ただし、資格取得をすることで専門知識やスキルを証明でき、転職の際にも強みになります。
1.機械保全技能士
機械保全技能士は、公益社団法人日本プラントメンテナンス協会が実施している、設備保全の知識と技能を証明できる国家資格です。故障予防や設備改善の知識を活用し、生産効率向上に活かせるでしょう。
| 区分 | 受験資格 | 学科試験 | 実技試験 |
| 特級 | 1級保有+5年以上の実務経験 | ・五肢択一50問 | ・計画立案等作業試験 |
| 1級 | 7年以上の実務経験 | ・真偽法25問 ・四肢択一25問 | ・選択作業別試験(※) |
| 2級 | 2年以上の実務経験 | ・真偽法25問 ・四肢択一25問 | ・選択作業別試験(※) |
| 3級 | 実務経験不要 | ・真偽法30問 | ・選択作業別試験(※) |
※参照:公益社団法人日本プラントメンテナンス協会「 試験要項 | 国家検定 機械保全技能検定」
設備保全のスペシャリストとして認められる資格であるため、キャリアの幅を広げやすいです。
2.電気工事士
電気工事士は、電気設備の工事や取扱に必要な国家資格です。工場やビルの受電設備から屋内配線まで、幅広い電気設備を対象としています。点検や修理を安全かつ適切に行い、不具合対応にもスムーズに対応できる知識が身に付くでしょう。
| 区分 | 作業可能範囲 | 資格取得条件 | 試験内容(※) |
| 第一種 | ・第二種の範囲 ・最大電力500kW未満の工場・ビル | 試験合格後3年以上の実務経験 | CBT方式または筆記方式(四肢択一)50問 実技試験1問 |
| 第二種 | ・600V以下の一般住宅 ・小規模店舗 ・家庭用太陽光発電設備 | 試験合格のみ | CBT方式または筆記方式(四肢択一)50問 実技試験1問 |
※参照:一般財団法人電気技術者試験センター「電気工事士の資格概要」
特に、第一種電気工事士の資格を取得することで、工場の電気設備全般を扱えるため、設備保全のキャリアアップも期待できます。
3.電気主任技術者
電気主任技術者は、電気事業法で定められた電気設備の保安監督者としての国家資格で、一定規模以上の電気設備を扱う施設では選任が義務付けられています。事業用電気工作物の保安管理において最高位の資格であるため、高度な専門知識が求められます。
| 区分 | 取扱可能範囲 | 試験内容 |
| 第一種 | すべての事業用電気工作物 | ・一次試験(マークシート):理論、電力、機械、法規 ・二次試験(記述式):電力・管理、機械・制御 |
| 第二種 | 電圧17万V未満の事業用電気工作物 | ・一次試験(マークシート):理論、電力、機械、法規 ・二次試験(記述式):電力・管理、機械・制御 |
| 第三種 | 電圧5万V未満の事業用電気工作物 (出力5千kW以上の発電所を除く) | ・マークシートまたはCBT:理論、電力、機械、法規 |
電気設備の保安管理のスペシャリストとして認められる資格であるため、設備保全の現場でリーダーシップを発揮しやすいでしょう。より責任あるポジションで活躍したいという方にもおすすめです。
|ビーネックステクノロジーズで設備保全エンジニアのキャリアを始めよう
設備保全のあるべき姿は、製造業における生産ラインの効率的な維持管理に不可欠です。近年、ロボット導入や自動化が進む中で、専門スキルを持つ人材不足という課題が浮上しています。本記事では、設備保全の仕事内容やデジタル化の取り組みを解説しました。
ビーネックステクノロジーズが運営する求人検索サイト「NEXT ENGINEER」では、全国9,000件以上ものプロジェクトが掲載されているため、経験者はもちろん未経験者からでも設備保全エンジニアに挑戦することができます。また自社研修センターを保有し、ものづくりをイチから学ぶ10日間の機電研修や半導体製造装置を使った1カ月のセミコン研修を受講できるのも大きなメリットです。
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